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Z池のコイ拾い

福島県郡山市に住んでいた小学生釣師郎の住まいは、高台を走る国道の横にぽつんと立っている4、5階建ての小さなマンション兼事務所、つまり雑居ビルだった。

国道を挟んだマンションの前は、コイの養殖をしている大きなZ池だった。 そしてマンションの裏はそのコイを利用した釣り堀屋が坂の下にあった。

釣師郎はときどきお小遣いを貰って下の釣り堀に遊びに行ったが、まだまだ未熟者の釣師郎にコイが掛かったことは一度もなかった。 その釣り堀屋の息子が釣師郎の同級生であったため、よく時間が過ぎても女将さんは遊ばしてくれたもんだ。 でも、釣れたことがなかった。 ウキすら動かなかった。

ときおり竿が満月のようにしなりコイを釣るオヤジさんを見るにつけ、幼い釣師郎はすっごいなぁといつも羨ましく感動していた。 そのあたりから釣師郎はコイを釣ることに特別の憧れを持つようになったと思う。

今にして思えば郡山市は、コイの養殖が盛んだったのかもしれない。 小学校の反対側のずうっと行った所にも大きな養殖池があった。

この池の名前は忘れてしまったけど、なかなか監視の厳しい池で、隠れて釣っていてもすぐ見つかってしまうことで小学生には有名な池だった。 ショッカー軍団の秘密池と言っていた気がする。 捕まると戦闘員に改造されるとまことしやかに噂されていた。 もちろん度胸無しの釣師郎は隠れて釣りしたことはなかった。

ところがある日クラスの2人が、その秘密池の近くに誰も知らない秘密の川を偶然見つけ、そこで何匹かのコイ、それもオランダ鯉を釣ったとクラスで大騒ぎになった。

2人は当然クラスの男の子たちからヒーロー扱いとなった。 2人は自慢話を毎日していたが、釣り場は「秘密の場所」として口を割らなかった。 それがますますクラスの男の子たちを熱狂させた。 コイを釣ることを特別視していた釣師郎は羨ましくて仕方なかった。

ところがどうした風向きか、おまえだけには教えてやっぺと言うことで、その秘密の川にある日釣師郎は連れて行ってもらった。

それは池の近くの竹薮を踏み分け坂を下って行くと、小さなコンクリートの壁があってそこにはめ込まれた土管の穴から水が流れ出していた。 流れ出した水はドカンの下の5畳くらいの開きに流れ、そこから細い川となってやぶの中に流れて行っていた。

小学生が2人入ったらもう一杯のピンスポットのポイントだった。 今にして考えると、その人工の養殖池の水を地下水道で流していた訳で、その出口が誰も入ってこない竹薮の中の小川に繋がっていたのである。 こんな狭い所は誰も気が付かないし、気付いても大人は入ってこない所だ。

では何故ここでコイが何匹も小学生に釣れたのであろうか?

それは簡単さ。 養殖池から逃げ出したコイが、このごく小さい開きに長年に渡って溜まっていた秘密の場所だったのである。

釣師郎たちは竹薮に転がっていた竹の切れっ端を竿にした。 釣師郎は父親に買ってもらったお子様用の竿を持って行こうとしたが、その友達に怒られてしまった。

「そんな竿で釣り上げられる訳なかっぺぇ!?」

大物がごろごろいる秘密の場所では、そんなちゃちな竿では折られてしまうとのことだった。 釣師郎はその言葉を真に受け、期待に胸うち震わせていたのである。 そしていよいよその秘密の場所で、釣師郎たちはコイ釣りをしてみたのである。

釣れない…。

そりゃそうだわ。 その水溜まりのコイはこの前で釣り切ってしまったばかりだからである。 小学生の浅知恵。 何時までもあると思うな、魚とお金だった。

そして幼き釣師郎の心には、さらにコイが幻の魚として膨らんで行ったのである。 またしてもお預けだった。

でも釣師郎はコイ釣りで一回だけどものすごく楽しい釣りをしたことがある。 それはもっとずっと後の大学生になった時である。 釣り同好会のS先輩に連れられて、後輩何人かと一緒に真夏の多摩川に行ったのである。

もう最初から遊びの釣りなので、ラジカセやビールやパラソルを持って行った。 この場所も地元のS先輩の秘密の場所とのことだった。

土手の細い道から下った真ん前にある幅30メートルくらいの支流だった。 土手の道は狭い割には車の通りが多く、自動車を停めることはまず無理だった。 しかも、最寄りに駅もなければバス停もない所なので、意外に人がやって来ない都会の穴場であることに気が付いた。 だから釣師郎たちは相当歩かされたのを覚えている。

カンカン照りの暑い日で、川はちょうどいい具合にとろぉぉと流れていた。 

釣師郎たちはS先輩の指示に従い、吸い込みの仕掛けを買って持って来ていた。 釣師郎は小学生のころから鯉コクには縁があっても、コイ釣りからは完全に遠のいていた。 だから、吸い込み釣りと言ってもやったこともなく、釣りキチ三平で学習したぐらいであった。

釣師郎たちは土手にレジャーシートを敷いてパラソルを立て、ラジカセでサザンやシャネルズを聞きながら、生まれて初めての吸い込み釣りの準備に取り掛かった。

どっかの釣具屋で買ってきた市販のコイ餌を川の水で練ってダンゴにした。 S先輩に言わせるとホントのプロは秘伝のコイ餌があって、その材料や配合は釣師ごとの秘伝になっているそうだ。 まるで老舗のウナギ屋のタレみたいなもんである。

そう言えば、コイ釣師の釣友Sが言っていたが、このコイ釣りの餌に賭ける一級の鯉釣師の情熱と研究心と言ったら生半可なもんじゃねぇとのことだった。

マイクロバスを改造して全国の有名釣り場をさすらう鯉仙人クラスになると、秘伝の秘と言われる材料や配合、調理(?)方法がある。 その調理方法も人間様が食べるものよりもはるかに手間・暇・精根込めて作られる。 3日煮込むなんて序の口だそうだ。

釣師郎が聞いて一番驚いたある有名な鯉釣師の場合は、その秘中の秘である餌を一斗缶に詰めて、ここぞと狙いを付けた秘密の場所に定期的に継ぎ足しながら、2年間以上も沈めてコイを寄せるそうだ。 しかもその寄せの期間中は一度たりとも竿を出さないのである。

何たる遠大な計画だ…。

釣師郎はこの話を聞いた時、支笏湖の謎のマグロ頭事件(サロン・デ・トロ第2話)を瞬時に思い出してしまった。 きっと美笛沖にマグロを沈めた犯人も、もしかしたら同じようなことを考えていたのであろうか?

さて、話は戻るけど、釣師郎たちは市販の練り餌をちょっと柔らか目に練って、テニスボールくらいの大きさのダンゴにしろとS先輩から言われた。 そしてそのダンゴに吸い込みの仕掛けを埋め込みセット完了となった。

S先輩からは、あそことかあそこがポイントだから、そこにそのダンゴを打ち込めと言われた。 最初はバラけるぐらいの硬さで何度も打ち込みコイを寄せる。 それからちょっと固めに練ったダンゴを打ち込んで、安心して寄って来たコイに吸い込み鈎を吸い込ませて釣るんだ、そして後は気合だ!と、実に簡単明瞭な指導を受けた。

実におおらかな釣りであったが、同じポイントに正確に打ち込み続けることがこの釣りのポイントだ。 あっちに飛ばしたりこっちに飛ばしたりでは、コイが一個所に寄らず効率が悪いのである。 

キャスティングが下手クソで同じところに投げ込まれない未熟者には、こう言う邪道な釣り方もあるそうだ。 それを編み出したS先輩もなかなかの曲者だと思った。

簡単にバラけない程度の硬さに練ったダンゴをポイントに打ち込む。 その場合のコツは、ゴルフのパターと同じであって、ポイントの向こう側に落とすぐらいの気持ちで、強めにキャストする。

不幸にしてポイントを越えてしまっても大丈夫だ。 ダンゴがバラけない程度にゆるゆるとリーリングしてダンゴをポイントに引き寄せて停止させるのである。 そしてここからが邪道の邪道たる所以である。

今度は緩めに握ったダンゴをポイントに向かって手でいくつもぼんぼん投げ込むのである。 これでポイントのど真ん中に食わせダンゴがあって、その周辺にバラけダンゴが後からいくも敷設されるのである。 まさに逆転の発想である。

そして待つ。 この邪道の釣りでも釣れるんだなぁ、これが。

ロッドの先に鈴が付いていて、釣師郎たちは寝っ転がってマンガを読んでいても、忠実にリンリンと呼んでくれるのであった。 

鈴が鳴るとばっと飛び起きて竿をつかんで戦闘開始だ。 30センチから50センチぐらいのコイだったと思うけど、それはそれはよく引いてくれて実に楽しかった。 ビール1ダースで釣師郎たちは7,8匹釣った。

子供のころの気がかりが、これでふっと取れたような満足を実感した。 コイ釣りはやっぱ楽しい。 特に置き竿の釣りの面白さに目覚めてしまった。

そう言えば、それから10年以上も経って、鯉釣師の釣友Sに初めてレイクトローリングをさせて上げた際、トローリングて鯉釣りに似ていますねと言われたことがある。 言われてみれば似たところがあるようだ。 竿がぐいっと曲がったら、さぁ何が来たぁ!?てあのドキドキ感が堪りませんね。

釣師郎が今やっている釣りなんて、元を質せばみんな子供のころに感動した釣りが下敷きになっているような気がする。 

さて、話を昭和40年代のZ池に戻そう。

Z池には実はある秘密があったのである。 

子供のころの釣師郎は探検ごっこが大好きでいろんな森や河原や薮に常日頃から探索活動をしていた。 おそらく川口探検隊シリーズの見過ぎであろう。

Z池はその放水を、国道を挟んで裏の養殖場に繋がる川に流していたのである。 大きな排水口が国道のすぐ下にあって、そこから国道の下を、大きな土管を通して裏の崖の下の川に池の水を流していた。 日ごろ川は急流で入ることはできなかったが、その川は直ぐに二つに分かれ一つが養殖場に取水口に繋がっていた。 土管の長さは国道の幅以上あったので、20メートル以上はあったと思う。

さて、Z池にはもう一つの秘密があった。 それは年に一回池の掃除をするために池の水を干上げるのであった。 当然そこには商品のコイがしこたまいるために、養殖場の人達が総出で池の水を抜く前に、コイをすべて網で取り込んでしまう。

しかし、所詮は人がやること、取りこぼしがあるのである。

釣師郎はその日を待った。 

Z池が干上がったのを確認してZ池への進攻を決行したのである。 この秘密を知っている子供たちも岸辺の水溜まりでコイを捜していたが、運良く見つけても養殖場のオヤジたちに取り上げられてしまう、まさに大人と子供の戦いであった。 逆に拾ったコイを裏の養殖場に持って行くと、女将さんが引き換えにアメやジュースをくれたもんである。

釣師郎は最初から監視の厳しい岸辺は諦めていた。 今年は秘策あり。

釣師郎は干上がったその裏の川を遡り、地下の土管を通ってZ池に進入することを計画していたのである。

崖の上から川を覗くと既に水量は激減しており、遡行可能であることを確認した釣師郎は、崖を用心深く滑り降り、単独干上がった川に初めて降り立った。 そして用心深く川を遡り遂に土管の中に中腰になって侵入開始した。

向こう側の土管の出口からは西日が差し込みまぶしかった。 しかし釣師郎はそれを見逃しはしなかった。 土管の繋ぎ目のわずかなへこみに水がごく少量溜まっていたが、そこに何かが横たわっているのを。

滑って転ばないよう釣師郎はその横たわっているものの所へ急いだ。 そしてそれが思ったとおりコイであったことを確認した。 60センチはあったね。

水が干上がり逃げ場を失ったコイが水溜りの中に、それも絶対誰にも気がつかない地中の土管の中で取り残されていたのである。 釣師郎はそのびちびち跳ねる大きなコイを両手に抱きかかえて、いや押さえつけて、興奮しながら家に持ち帰ったのを覚えている。

しかし家に持ち帰っても飼えるわけなく、母親と一緒に養殖場の女将さんのところに返しに行って、引き換えにジュースを貰ったような記憶がある。 幼い釣師郎としては、憧れのコイ、それも大きなコイを捕まえた喜びで既に満足であった。

ところで、Z池にはオマケがあった。

Z池の西隣りにゴルフの打ち放し練習場があった。 

池の掃除で水を抜くと、練習場から外れて飛んで来たボールが、水の引いた岸辺で結構拾うことができた。 このボールを集めて練習所に持って行くと1個10円で買い取ってくれたのである。 子供たちにとっては結構楽しいお小遣い稼ぎであった。 

ご多分に漏れず釣師郎も放課後ゴルフボールを拾いに岸部の捜索をしたある日のことである。 護岸の縁の上に誰かがたったさっき置き忘れていったと思われる茶色の紙袋を釣師郎は見つけた。 縦横20センチぐらいの大きさで、紙はどこも汚れてなく変なシワも付いておらずピンとして置かれてあった。

釣師郎は何だろうと思って紙袋を恐る恐る開けてみた。 すると中から小学生の釣師郎には、いや今でもまったく理解不能なのであるのだが、何と恐るべきかな、ピンクのパンティー2枚と女性用のカツラが出て来たのである。 それも両方とも新品のように真新しかった。

コイの養殖池にピンクのパンティーとカツラ、謎が謎を呼ぶ事件であった。 怖くなった釣師郎はその袋を元の所に置いて現場から逃げ去った。 今でも思うのだが、あれはいったい誰が何の目的であんな所にあんな物を置いたのであろうか? 

バケツ一杯にゴルフボールを拾った釣師郎は、きっと50個ぐらいあるから500円くらいになるなと内心ほくほくしながら練習場に向かった。 当時の小学生にとって500円は大金であった。 たしかスプライトの自動販売機が1本45円だったか、50円だったかの時代である。

釣師郎はニコニコしながら練習場のフロントの親爺にバケツを出したら、ボクありがとうねとコーラを一本だけくれた。

それから釣師郎はゴルフをやる人間が信じられなくなった。 バリバリの営業マンである釣師郎は、今でも何故か頑かたくなにゴルフだけは拒否しているのである。 釣師郎にはどうやらトラウマができてしまったようである。

ゴルフクラブを握ると、ハカイダーが吹く「ギルの横笛」に苦しむキカイダーのように釣師郎はアタマが割れるように痛くなるのである。

 大人は嘘吐きだぁぁぁぁぁ!!

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choshiro

Author:choshiro
釣師朗 (ちょうしろう)
マス類の70オーバー(管釣は除く)はないけれど、60オーバーは数本揚げている程度の自称”大物レイトロ師” 写真の獲物は琵琶湖のビワマス。しかしその実態は小物得意のヒメトロ師だ。
家計の足しに東京湾にも出漁するが、アジ・サバ・キスと典型的な東京湾サンデー小物師。銀山・中禅寺は苦手。芦ノ湖、琵琶湖は好き。ルアーの宗派は天然貝教清貧派の模範的な信者。ビックミノーやバブリーな釣り道具は使わない、いや買えない。
千葉県にあっても”東京”ディズニーランドのある浦安市在住。年齢は平均寿命の半分をとっくに過ぎたねて感じ。大病もしたし後何回釣り出来るかなて思う今日この頃てか。

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